蝶の詳細

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オオムラサキ    
Great Purple Emperor    タテハチョウ科

飼育、1985年6月23日羽化(大分県日田郡大山町産)

【 学 名 】Sasakia charonda (Hewitson,1863)【 大きさ 】
【 時 期 】6月~8月(夏)【 発生数 】
【 生息地 】山地のクヌギ林
【 内 容 】 私が北九州市のある病院に勤務していた時のことである。私は外来診察室の壁に、台湾の蝶の標本をかけていた。それをみて、1970年(昭和45年)7月上旬、通院していた小学校の女の先生が、家の近くにオオムラサキがいるという。私は、自分でも生きたオオムラサキは、熊本県葦北郡でそれらしいのを中学生のとき一度見ただけで、そんな簡単にいるはずがなく、おそらく、カラスアゲハでも、オオムラサキと思っているだろうと本気にしなかった。ところが、4、5日して、「オオムラサキを採りました」といって、先生は紙の箱に蝶を入れてきた。箱の蓋を開けてみると、なんと、正真正銘のオオムラサキが3頭も入って、ばたついているではないか。もう、その時の驚きといったら表現できないくらいであった。紙の箱の中で暴れたので、鱗粉が落ちてしまって標本にはならない。
 それで、早速、1970年7月19日に、その場所にいった。暑い夏の日であった。たしかに、そこでは眼の前にオオムラサキが何頭も飛んでいた。少し離れた場所にクヌギ林があり、1本のクヌギの木の根元に2、3頭のオオムラサキが樹液を吸っていた。網をかぶせて捕らえようとしたが、うまく網がかぶせられない。手を蝶の近くに持っていったが、逃げようとしない。さっと指を伸ばせて、オオムラサキをつかんでしまった。なんと、珍蝶オオムラサキをつかみとってしまったのだ。こうして、2頭のオオムラサキをつかんで採集した。その標本は今も、私の標本箱の中にある。その後、オオムラサキを見たのは、九重山で一度だけである。
 オオムラサキは、国外では、台湾の北部山地、中国大陸、朝鮮半島に分布する。わが国では、北海道南西部、本州、四国、九州に分布する。佐賀昆虫同好会の故古賀善十前会長は、何十年も、佐賀県内で、オオムラサキを追っておられるが、今日まで、まだ発見されておらず、採集記録もない。佐賀県、長崎県には、この蝶は分布しないと考えられている。
 オオムラサキは、タテハチョウ科の中で最大級の大きさである。雄の羽の表面は、強く輝く基半部の紫と、それを囲む周辺部の黒で、黄斑、白斑が散在する。雌は、雄より、さらに大型であるが、紫色の輝きはない。オオムラサキの高貴な美しさは、世界に誇る日本の国蝶にふさわしい。日本の切手にも採用されているので、この蝶は広く知られている。わが国西南部の暖地では、主に山地帯にのみ産し少ない。年1回の発生で、暖地では、6月下旬から、寒冷地では、7月中・下旬から羽化する。クヌギ、コナラ、エノキなどの雑木林に生息することが多い。集団でクヌギの木に止まって吸蜜することがある。食餌植物は、ニレ科のエゾエノキ、エンキである。
 オオムラサキの生態写真集も発刊されているが、私はまだ、この蝶の野外での生態撮影の経験はない。この成虫の写真は、佐賀昆虫同好会の会員坂井文雄氏から贈られた蛹が、1985年6月23日に自宅で羽化したものである。


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