淡水魚詳細

詳細表示です。

アブラボテ    コイ科    準絶滅危惧

婚姻色 1991.10.27 多布施川(佐賀市)

学名Tanakia limbata  大きさ7cm
地方名たばや、でんばや、べんばや、べにばや、しぶたい、しぶたご、しびんた、せきたんつー
生息域中流域
内容 県内では、タナゴの仲間は「でんばや、べんばや」等と混称されるが、アブラボテだけは「しぶたい、しびんた」等と呼ばれ、他のタナゴ類と区別されることがあるようである。県外には「くそばえ・くそぶな・にがぶな」などの地方名がある。いずれも、鯛、鮠(はや)、鮒に似たまずい魚、または体色から出た呼称と思われる。和名のアブラボテは油色の平たい魚の意味で、もともと大阪付近の呼称である。
 タナゴの仲間では最も速い流速を好み、名古屋以西に広く分布する。瞬発的な突進速度がずば抜けており、水槽の中で飼育すると他のタナゴ類よりもよく馴れ、持ち前の突進力で餌を独り占めし、成長速度も他を圧倒する。
 貝から泳出したばかりの稚魚は他のタナゴと同様に背ビレにカゼトゲタナゴを思わせるような黒色斑紋が見られるが、2cmを超える頃には消失して、背ビレと尻ビレの先端がやや黄土色を帯びてくる。さらに、ヒレを含めた体全体が黄土色を帯びる。成熟すると黄緑暗褐色に変化する。黄土色だったヒレは、黒色と鮮やかなオレンジ色の縞模様が現れシックな色調になる。また、このような婚姻色は、九州産のものが一際鮮やかであるらしい。
 成熟した雄の鼻先には白色のいぼの様な構造が見られる。これは「追い星」と呼ばれる角質化した固い組織で、成熟した雄によく発達する。繁殖期に他の雄を突っついて排除する時に使われる。
 初めて見た人は皮膚病と勘違いするようであるが、人間で例えれば思春期のニキビの様なもので、繁殖期の終わりには脱落してしまう。
 アブラボテは有明海側の河川では普通に見られる魚であるが、玄界灘側の河川には非常に少ない。1976年の松浦川水系を対象とした調査記録を見ても私たちが行った調査でも松浦川水系で本種が確認されたのは、松浦川では伊万里市松浦町桃川~大川町大川野の水路を含んだ一帯と徳須恵川の伊万里市南波多町高瀬付近のみである。どちらも、同じような盆地地形である。現在、安定してアブラボテの姿を確認できるのは南波多町の高瀬付近のみである。いるところにはうんざりするほどいるけど、そのようなところはあまり多くないということなのだろうか。メダカやシマドジョウ類の例のように有明海側のものと玄界灘側のものでは異なる遺伝子集団の可能性も高く、生息地が局限される松浦川水系のアブラボテは、その生存に十分配慮を要する魚である。

1994.8.1 六角川(武雄市)


「佐賀の自然デジタル大百科事典」に掲載しているデータ(文章・写真等)の複製(印刷、ハードコピー等)、転載等は、学校教育に使用される場合等を除き、無許可での複製・転載を禁止します。詳しくは利用案内をご覧ください。