淡水魚詳細

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ニホンイトヨ    トゲウオ科    (絶滅のおそれのある地域個体群)

1994.3.4 半田川(唐津市) 熊本常夫氏捕獲

学名Gasterosteus nipponicus  大きさ8cm
地方名
生息域下流域、河口・汽水域、玄界灘側
内容 トゲウオ科の魚は、ジグザグダンスと呼ばれる求愛行動や鳥の巣に似た産卵巣をつくる魚として有名な魚である。ただし、小鳥顔負けの立派な産卵巣をつくるのは、10本前後の棘を持つトミヨ属の方で、イトヨ属の方は、中に「焼き芋」でも入っていそうな、ゴミ溜めのような産卵巣をこしらえる。
 冷水性の回遊魚で、太平洋側では利根川以北、日本海側では山口県以北に分布するとされていた魚である。
 背ビレの変化した独立棘を3本持ち、腹ビレも1対の棘になっている。しかし、通常はこの棘は体に密着して収納されており、サバのミニチュアのような印象を受ける。
 県内では3月頃に玄界地方の河川に遡上してくる個体がシロウオ漁で混獲される。河川に遡上すると雌は腹部がはちきれんばかりに肥大する。雄は背側が青色、喉から腹にかけては鮮やかな朱色の美しい婚姻色を呈する。
 雄は直径6cmほどの円錐型のくぼみの中心に、水草をくわえてきては差し込み、同じく砂を運んできては上からばらまき、この後肛門をすりつけながら腎臓からの粘着液を体を震わせながら塗り付けていく。こうした作業を繰り返してトンネル型の巣を完成させる。
 雌は、産卵を行うだけで産卵後数日で死亡する。雄は卵がふ化するまで、侵入者を果敢に攻撃したり、卵に胸びれで新鮮な水を送ったり(ファンニング)、死卵を除いたりと甲斐甲斐しく世話をし、稚魚の姿を見届けた後、ゼンマイが切れたように死亡する。3cmほどに成長した稚魚は6月頃に降海し、春まで海で生活する。
 イトヨの仲間には、サケのように海と川を往復する降海型と、一生を淡水だけで生活するようになった陸封型の2つがある。これまでイトヨとされてきた魚には、日本海系イトヨと太平洋系イトヨの2つの系統があり、それらは別種であると考えられるようになってきた。なお、日本海系イトヨは降海型のみであるが、太平洋系イトヨには降海型と陸封型がある。陸封型は本州の湧水地帯に見られ、こちらは天然記念物等の指定を受けている。これらの陸封型は1カ所で生じたものが各地に分散したのではなく、各地で独自に陸封されていったと考えられており、これらの分類については、まだ整理されていない。
 環境省の第4次レッドリストには「絶滅の恐れのある地域個体群」に「本州のイトヨ日本海型」という呼称で掲載されている。

<攻撃>縄張りへの侵入者は雌でも激しく攻撃する 1994.3.4 半田川(唐津市) 熊本常夫氏捕獲

<巣材の固定>肛門をすりつける様にして、腎臓からの分泌物を塗りつけていく 1994.3.4 半田川(唐津市) 熊本常夫氏捕獲

<巣材の搬入>水中の植物片をくわえて、巣の中心に挿入する 1994.3.4 (同上)

<砂の搬出>巣の中の砂をくわえて運び出す 1994.3.4 (同上)

<ファンニング>胸ビレをつかって巣の中の卵に新鮮な水を送る 1994.3.4 (同上)

巣から泳ぎ出た仔魚 1993.5.


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