カゼトゲタナゴ北九州個体群 コイ科 絶滅危惧ⅠB類 | |||
![]() 雄 1992.6 晴気川水系の水路(小城市小城町) | |||
学名 | Rhodeus smithii smithii | 大きさ | 5cm |
地方名 | たばや、でんばや、べんばや、べにばや、せきたんつー | ||
生息域 | 小水路、クリーク | ||
内容 | カゼトゲタナゴの雄は産卵期には愛くるしいアイラインと口紅で、雌を誘う。ヒゲもなく一見バラタナゴ類に似るが、肩部の金属光沢がなく、体側のブルーの線も色彩が異なる。つまり、バラタナゴ類は水色の線が背ビレの起点より後方から始まって、尾柄付近で細まって消え入るように終わる。雌は線自体が細く目立たないことがある。これに対してカゼトゲタナゴではコバルトブルーの線が背ビレの起点より前方で始まり、尾柄末端で太いまま断絶する。雌も雄と同様であるがむしろ紺色に近い。また、その延長の尾ビレの基部が雌雄とも黒ずむ。 カゼトゲタナゴは世界中で北部九州にのみ生息する極端に分布域の狭い魚である。河川やクリークも利用しないことはないが、むしろやや流れのある水の澄んだ小水路を好むので農業用水路は主要な生息地であった。 ところが近年、そのような環境は、圃場整備によって単調で巨大な水路に変わってしまった。また、宅地化によって三面コンクリート張りになったり、土砂の堆積で水深が異常に浅くなったりして、徐々に、かつ確実に悪化している。 現在、本種にとって一番安定した環境は、意外にも佐賀市街を網羅する多布施川の小支流かも知れない。 広島県東部から兵庫県西部には、スイゲンゼニタナゴが生息する。 スイゲンゼニタナゴは岡山県で1963年に発見され、1935年に韓国の水原で捕獲されたものと同種であるとされスイゲンゼニタナゴと呼ばれるようになった。その後長い間カゼトゲタナゴの別亜種として扱われてきたが、近年、亜種ほどの違いもないとして「カゼトゲタナゴ山陽個体群」とされた。その場合、これまでのカゼトゲタナゴは「カゼトゲタナゴ北九州個体群」として区別する。 なお、スイゲンゼニタナゴ(カゼトゲタナゴ山陽個体群)の方は、環境省の第4次レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠA類に指定されており、さらに捕獲や国内取引は種の保存法で禁止されている。 | ||
![]() 雌 1993.8 晴気川水系の水路(小城市小城町) |