淡水魚詳細

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ヌマムツ    コイ科    

婚姻色 1994.8 多布施川水系(佐賀市)

学名Candidia sieboldii  大きさ15cm
地方名あかはや、さんじ、しらはや、はや、やまそう、やまぶき、ほりばや
生息域中~下流域、クリーク・ため池
内容 1994年の夏はまれにみる大渇水で、淡水魚にとっても受難の季節だった。大挙して河口に押し寄せるはずのヨシノボリ類の稚魚の姿はなく、水溜まりと化した中小河川には、産卵を断念したらしい婚姻色の消えた親魚と流れのあった頃にふ化した少数の稚魚が息も絶え絶えであった。
 そうした中、比較的状況の良かった嘉瀬川水系で久しぶりに美しい婚姻色の現れたカワムツの雄が捕獲された。普段なら見向きもしないところだが、懐かしい美しさに見とれていると何か違う。背ビレだけでなく、黄色のはずの胸ビレ、腹ビレともに朱色である。体色も含めて不透明なピンクっぽい朱色である。
 佐賀県産のカワムツについての疑問が一気に解けた。つまり、何故クリークにもいるのか。体側の黒条が淡いものが多く、時としてそれが完全に消失していることがある。これら、学生時代に見た広島のカワムツと異なる特徴は、すべて止水域を好むヌマムツの特徴であり、平野の止水域の乏しい広島で見たものはすべてカワムツだったのである。また、県内には、クリークに見られる「はや」を意味する「ほりばや」という呼び方があり、ヌマムツの地方名と考えられる。
 追い星の出方も異なるが、両者の形態的な相違点は側線鱗数の他に、尻ビレ軟条がヌマムツの方が1本少ない9本であることなどがある。
 1988年にそれまでカワムツとして扱われていたものの中に色彩や形態の異なる2タイプがあることが発表され、しばらくの間、カワムツA型とカワムツB型と呼ばれた。その後、両者は別種であると認められ、前者はヌマムツ(C. sieboldii)、後者はカワムツ(C. temminckii)とされた。なお、ヌマムツの学名は江戸時代、長崎にあったオランダ商館のドイツ人医師シーボルトに由来し、彼が日本に滞在中に集めた様々な標本を元に日本植物誌や日本動物誌を編集したことに対する献名である。また、カワムツの学名は日本動物誌編集の際に脊椎動物の研究を任されたオランダのライデン博物館初代館長テミンクに由来している。

1994.8 (同上)

未成魚 1993.8 晴気川水系の水路(小城市小城町)

オイカワとヌマムツの雑種と思われる個体 1994.6 多布施川(佐賀市)

ヌマムツとハスの雑種と思われる個体 婚姻色 1991.8.30 城原川(神埼市神埼町)


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