ヤマノカミ カジカ科 絶滅危惧ⅠB類 | |||
![]() 雌の成魚 1993.10.14 天佑寺川(佐賀市) 森嘉彦氏捕獲 | |||
学名 | Trachidermus fasciatus | 大きさ | 16cm |
地方名 | やまんかみ、かわんかみ、かわんかみどんこ、かわかみどんこ、かんかんじょう、かわおこず、おこず、たちゃ | ||
生息域 | 中~下流域、有明海側のみ | ||
内容 | カジカ科の大陸系遺存種で、国内には有明海湾奥部とその流入河川にのみ生息する。前鰓蓋骨(さいがいこつ)に4つの棘があり、鰓膜(さいまく)が明瞭な橙色であるなどの特徴があり、他と間違えることはない。 和名の由来となった「山の神」は容貌が醜く、古くから女性が山に入るとやきもちを焼くとされた女神である。きこりは、この女神の怒りを鎮めるために、さらに醜悪なオコゼの類を捧げる習慣が全国各地にある。ヤマノカミの名は、オコゼに似ていることからきたものか、実際に「山の神」に捧げたことからきたものかは定かでない。 中国では四鰓鱸とも呼ばれる。これは、成熟した個体では前鰓蓋骨の後方も鰓膜と同じ橙色になるため、鰓蓋が2対あるように見えるためであろう。また、長江流域の松江鱸もスズキではなく、ヤマノカミのことである。 昼間は、石の下や木杭等の物陰に身を寄せ、夜に活動し甲殻類や小魚を捕食する。11月頃に有明海に産卵のために降海する。このころには、雌は卵巣が発達して石鹸でも飲み込んだかのような体形になっている。雄は、頭が雌よりもひとまわり大きくなり区別は容易になる。 河口や干潟域に到達すると、雌はタイラギの貝殻内に2cmほどの粘着卵を産み1年の寿命を終える。雄は、卵を保護した後やはり死亡する。産卵に参加しなかったものは、もう1年生きる。 5月頃に2~3cmほどになった稚魚は河川に遡上する。河川が各種の近代的な堰によって分断された現在では、ほとんどの河川で河口に最も近い堰で遡上が阻害され、本来の生息地に到達できていない。 | ||
![]() 雄の頭部 1994.12 多布施川(佐賀市) 古川国夫氏捕獲 | |||
![]() 雌の頭部 1994.7.10 浜川(鹿島市) | |||
![]() 遡上期の幼魚 1993.5.3 本庄江(佐賀市) | |||
![]() 雄の成魚は行動も慎重で、第1背ビレの第3棘が短くなる様だ 1994.12 多布施川(佐賀市) 古川国夫氏捕獲 | |||
![]() 冬期には雌の腹部は卵で膨らむ 1993.10.14 天佑寺川(佐賀市) 森嘉彦氏捕獲 | |||
![]() ヤマノカミの卵 1994.2.15 |