淡水魚といえば、普通に考えれば淡水に住む魚ということになる。しかし、淡水魚は淡水のみで生活するのではない。ご存じのようにアユは秋にふ化した稚魚が春まで海で生活するし、ウナギはフィリピン沖の深海底に戻って産卵する。また、一般に、海水魚と思われているものでも汽水域から純淡水域に侵入するものも意外と多い。以下に、生活環による淡水魚のグループ分けを述べる。なお、円口類(ヤツメウナギの仲間)は厳密には魚ではないが慣例に従って魚として扱かっている。
淡水で一生を過ごす正真正銘の淡水魚で、コイやドジョウの仲間やナマズやギバチの仲間などの他にカワヨシノボリなどの陸封魚も含まれる。海水への抵抗性がほとんどなく、海に入ることができないため、分布の拡大には氷河期などの海岸線が後退した時期に、複数の河川が合流して1つの大きな河川や湖になることが必要である。現在の分布は、日本列島が形成されてきた過程のような過去の地史を物語っているものと考えられている。
淡水と海の間を必ず往復する魚のことで、サケの仲間、ハゼの仲間、などがこれにあたる。さらに産卵との関係から、ウナギやヤマノカミなど海に入って産卵するものを降河回遊魚。サケ、イトヨなど産卵のために川に上るものを遡河回遊魚。また、アユやヌマチチブなどのように産卵とは直接関係なく、遡河または降河を行うものを両側回遊魚と細かく分けることがある。
ボラやスズキのように通常は海で生活しているが、時として淡水域や汽水域にも侵入してくるものや、マハゼのように汽水域の魚としか呼べないものも含まれる。