シソ科のホトケノザという紅紫色の花が群がって咲く畦道、スイバの葉もだいぶん大きくなった小川のほとり、キンポウゲの黄色の花、カラスノエンドウも可愛い花を付けている。ああ春になつたと実感する。そんなのどかな一日、鍋島町の荻野地区のクリークで堀干し、佐賀ではゴミクイとか、ゴミアゲとも言うらしい、行事があった。
自治会の方々や子供クラブ、ボランティアグループ、消防団等の人々が知恵と体力を出し合って、数十年ぶりの堀の大掃除となった。水車も大切に保管されていたものを借りて踏めるようにしてある。ポンプや機械の力を借りクリークの水は段々減つてゆき小魚達が少しでも水の多い方へ移動する。鮒などは体を寝かせて泳いでいる。ウロコがキラキラ光る。メダカもいる。ナマズもいる。虹色に輝くバラタナゴもいる。ナマズやドジョウ等の川魚には思い出が沢山ある。私が子供の頃は、竹串に刺した川魚の素焼きをわらづとに刺して保存食であった。そのナマズの味噌煮がとても好きだった。今日、久しぶりにナマズの味噌汁を頂いた。少し思い出の味とは違ったけど懐かしかった。
小さい頃、ザルですくったメダカや鮒をバケツや桶に入れて、餌はミミズやご飯つぶ、それに防火用水の中に沢山いたピンピン虫(ボウフラのこと、ピンピン虫と呼んだ方がより特徴をとらえているようだけど)を取って入れてやった。迷い込んで来たカイツブリもタライに水を張って入れてみた。でもすぐに逃げられた。子供ながら水鳥ということを知っていたらしい。生き物との付き合いは、田舎の子供達にとって当たり前のことで何でもかんでも飼っていた。
春、夏、秋と川遊びは飽きなかつた。川は今より身近だった。入り易く上り易いようになっていて、草も土砂も石ころも程よくあった。今、堀や川がコンクリートで整備されている所が多く子供達はあまり遊ばなくなった。もっと自然を相手に遊んで欲しい。ゆったりとした時間を生き物達を見つめながら、遊びながら共有して欲しい。川底の砂を素足で踏んだ時の感触や草の根元をザルですくって上げる時のワクワクするときめきを体験させてやりたい。その為には、安心して入れる川、生き物達の棲める川が必要である。川が本来の川であるように願っている。