佐賀県では今までに約300種の野鳥が知られているが、その半数近くが水鳥や水辺の鳥といわれている海・川・湖沼やその周辺を生活の場にしている鳥達で、その中の多くは魚に依存して生きており、魚の減少は野鳥に大きな影響を与える。それはツル・サギ・ウ・カモメ・シギ・カワセミ・海鳥等の仲間で、大空を舞うワシ・タカの中にもフィッシュ・イーターとしてよく知られている種がある。これ等の鳥と魚の関係は野鳥が魚類の捕食者となる場合が一般的だが、時には逆の場合もあるし、又水鳥の体に付いた魚卵が遠隔地に運ばれて魚の増殖に役立つこともある。
魚の集まる所にはいつも水鳥の姿があるが、この習性は古来伝統的な漁法として利用されてきた。水鳥に追われて密集した集団になるキビナゴを網で捕る「鳥もちあじろ」という漁法が古くから瀬戸内海で行われているし、近年盛んになったプレジャーボートによるトローリングも水鳥の群「鳥やま」を発見することから始まる。
川ではウ(佐賀でウノトリ)を使ってアユを捕る鵜飼(うかい)があるが、佐賀地方では以前クリークでフナを捕る鵜飼が行われていた。筑後川上流の原鶴温泉はアユの名所としてもよく知られ、戦前から鵜飼が盛んである。秋も深まり川にアユの姿が見られなくなる頃、ここのウは佐賀市北川副町の鵜匠原口夘六さんに引き継がれ堀の鵜飼に使われるが、春暖かくなると再び原鶴に帰っていく。
舟を使用するアユ漁とは異なり、堀ではウに引き綱を付けず自由な行動に任せられる。百匁のフナといえば釣人の間では大物であるが、これ位のフナは一呑みにしていた。又この鵜飼にはいつもお供がついていて、5メートル以上もある長竿の先に網を付け、手前に掻くようにして魚を捕る「まえかき」を持った人達が、ウに追われて岸辺の水草に身を潜めたフナをこの網で捕らせてもらうのである。
ウの篭を担ぐ鵜匠を先頭に、長竿を持った人達が続くこの集団は冬枯れした田園の風物詩として親しまれていたが、鵜匠の原口さんも既に故人となられ、今日ではそれを知る人も少なくなったようである。