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堀覚え書き 「堀干し」の楽しみ


 麦作のため水を落とした冬場の堀の楽しみは堀干しだった。魚たちは堀底を掘って作られているヌクメの中に集まってじっとして、さながら越冬状態。水抜きは、古くは水車を、後にはポンプを使った。いよいよ堀が干し上がりヌクメを開くと、コイ、フナ、ナマズ、ウナギ、ハヤなど食用魚からギバチ、ライギョまでがバチャバチャ。スッポンも加わり、魚市場のにぎやかさ。魚買いさんもやってきた。

 その日の夕餉は、コイの味噌汁にフナの酢ぬたが賞味された。その夜遅くまでかかって焼いてつくられた小ブナの串焼きは、麦藁の束に刺し、かまどの上などにつり下げられて保存食(ヒボカシ)とした。時々取り出しては、さっとあぶって醤油で食べる味は、酒の友として珍重された。