昨年は、少雨に酷暑そして新年早々には、神戸を中心に大きな地震が来た。今年に入っても雨は少なく、昨年以上の渇水になるのではと心配されている。低平地の広がる、佐賀の山は浅い。武雄を流れる一級河川六角川の源流、神六山の標高は447メートルであり、その浅い山に河川の環境維持水としての水の供出は望めない。むしろ途中の利水ダムの水の確保さえ、危うくなってきているのが現状であろう。
近年、家庭における水の使用量は、益々多くなってきている。この水の排水の技術が、生活の快適環境をつくるための重要なポイントになると思う。勿論、生活の快適環境は、人のみでは無く生態系全体からの評価でなければならない。
かつての暮らしの中では、家庭からの排水の処理技術は、素掘りの溜桝やその回りのミミズや土壌微生物の働きで足りてきた。その部分を拡大し、今の技術を付加したものが、個別処理の家庭用合併浄化槽といえると思う。水を大量に消費する今の暮らしの中で、人と自然とのいい関係を保とうとすれば、その中間に水処理施設を介在させることが不可欠である。
各家庭で個別処理し、河川に環境維持水として戻す。上流のダムで取り上げた水を、一度家庭で使い元の水質に浄化して同じ量をその場で川に戻す。水を棄てるのではなく、水を創(つく)る・創造するイメージである。
私は5年前に、乳酸菌飲料の容器を濾材にした家庭用合併浄化槽を設置し、その機能を検証してきたが、年間(日間)をとおしてBOD(生物化学的酸素要求量)1ppmを維持している。環境に対する水質は、BODだけではなく、窒素やリンや界面活性剤など幾つかの要素が考えられるが、それらについては家庭内での制御や、河川の土壌や植・生物の浄化能力など、総合的・重層的な水浄化のネットワークを、構築していくことで解決できると思う。
阪神大震災は、都市におけるライフラインの脆弱さを露呈した。パイプラインを引き回し、下流で大量処理する水処理方法がいいか、各家庭で処理し、近くの川に戻してやる個別処理方法がいいか、低平地で軟弱地盤そして山が浅い(河川途中の水が少ない)、そのような佐賀の自然環境の中で、佐賀に見合った技術を見出し、それを積極的に進める時期にきていると思う。そしてそのことが多様な生物が棲める水の復権、結果として人も住みやすい水環境の再生につながると思う。そのような自然と共生したナチュラルライフラインの構築が、阪神大震災から私たちへのメッセージと思っている。